こんにちは。misato です。
今回は「即席めん(インスタントラーメン)業界の大手2社 日清食品・東洋水産の比較」をテーマに書いていきたいと思います。
グラフを用いながらわかりやすく解説していきます。
▼こちらの記事はこのような方におすすめです。
❶即席めんメーカーへの就職・転職をお考えの方
❷即席めんメーカー2強の違いに興味のある方
❸即席めん業界の特徴について知りたい方
私は大手メーカーに勤務しています。
メーカーでのマーケティング、広報IRの経験を活かして、いろいろな業界の市場規模や各社メーカーの戦略を分析しています。
業界研究のやり方についてはこちらに詳しく書いていますのでよかったらこちらも参考にしてください。
こちらのページの最後に各社の詳細な企業研究(各社の売上規模や強み、今後の戦略などをまとめたもの)へのリンクも貼っています。
どうぞ最後までお付き合いください!
はじめに
今回比較する会社は以下2社です。
・日清食品ホールディングス株式会社(以下、日清食品)
・東洋水産株式会社(以下、東洋水産)
国内にはこの他に「サッポロ一番」のサンヨー食品、「スーパーカップ」のエースコックなどが存在しますが、売上規模はこの2社と比較すると大きくありません。
今回は日清食品と東洋水産の2強にしぼってランキングを作成しています。
▼こちらの記事に関する注意事項
*各社最新決算期の数値でランキングを作成しています。
*時価総額のみ執筆日当日の数値です。
*2日清食品の会計基準はIFRS、東洋水産は日本基準です。
売上高
まずは売上高の比較からみていきましょう。
売上高では日清食品の方が大きいということがわかりました。
2社の差としては約500億円です。
国内即席めん事業だけの売上高でみてみると?
両社ともに即席めん事業だけでなく、日清食品は菓子など、東洋水産は水産事業なども展開しています。
そこで会社全体の売上ではなく、国内即席めん事業だけを取り出して比較をしてみました。
下記事業の数値を抜き出して作成。
・東洋水産:国内即席めん事業
・日清食品:日清食品、明星食品
国内即席めん事業だけで比べても日清食品の方が大きいという結果になりました。
東洋水産は即席めん事業以外にも、水産食品事業(コンビニエンスストアのおにぎり・お弁当、即席麺の具材などに使用されている水産加工食品など)や冷蔵事業(取引先の食品を冷凍・冷蔵保管するサービス)を展開しています。
営業利益
つづいて営業利益の比較です。
利益でも順位は変わらず、日清食品の方が大きいです。
売上では1.1倍ほどの差しかなかったのですが、営業利益でみてみると日清食品は東洋水産の約1.5倍の規模になります。
営業利益率
売上高に占める営業利益に割合を示す営業利益率のランキングです。
ここでも日清食品の方が少ない売上で効率的に利益を生み出しているということがわかりました。
売上高、利益ともに日清食品に軍配が上がるという結果となりました。
売上原価率
各社の特徴を探るため、コスト構造も分解していきます。
売上原価率とは売上高のうち、売上原価(売れた商品の仕入れや製造にかかった費用)の割合を示す比率のことです。
売上原価率は低い方がより少ないコストで効率的に利益を生み出せるようになります。
売上原価率では東洋水産の方が優れているという結果になりました。
水産加工食品を扱っている会社は原価が比較的高い傾向にあるのですが、東洋水産はその予想を裏切って効率的に商品を製造していることがわかりました。
参考として、水産加工品を扱う下記の会社の売上原価率は下記の通りです。
・ニッスイ 80.6%
・マルハニチロ 86.6%
こちらの2社と比較すると東洋水産の売上原価率は低いですよね。
もしかしたら東洋水産の水産食品事業の売上構成比は1割にも満たないので、影響はそれほどないのかもしれません。
売上原価率は大体乳業業界と同等レベル(参考:明治 63.1%・森永乳業 68.0%)という結果でした。
販管費率
販管費率とは売上高のうち、販管費(販売費や広告宣伝費、運賃など)の割合を示す比率のことです。
販管費率は低い方がより少ないコストで効率的に利益を生み出せるようになります。
販管費率は売上原価率と順位が逆転し、日清食品印の方が優れているという結果になりました。
日清食品の販管費率はなぜ低いのか?ということを探るために以下、販管費の中身である「販売促進費」と「広告宣伝費」についても比較してみます。
販売促進費率
販管費の中身は各社で公表している内容が異なりますので、一概に比較することは難しいです。
そこで各社が共通で公表している数値である販売促進費でランキングを作成してみました。
販売促進費とは小売業者への販売促進費(リベート)や消費者キャンペーンなどにかかるコストのことです。
メーカーはこれらを戦略的に使用することで、効率的・効果的に売上高を上げていきます。
※各社下記の数値を用いて算出しています(販売促進費は呼称が異なることがあります)
・日清食品:促進費
・東洋水産:販売促進費
こちらの数字だけみると日清食品は圧倒的に少ない販売促進費で効率的に売り上げを上げているということになります。
ただしこちらは日清食品はIFRS、東洋水産は日本基準という会計基準の差がありますので、その影響が大きいと考えられます。
大変ざっくりな解説をすると、IFRS(日清食品)は該当する販売促進費を販売費として計上するのではなく売上高から控除しているため、販売促進費は少なくなります。
広告宣伝費
つづいて広告宣伝費についても比較していきます。
広告宣伝費とは、テレビCMやネット広告、パンフレット作成などにかかるコストのことです。
日清食品の強いブランドづくりには多くのタレントを使用した大々的なプロモーションも背景にあるかと思います。
やはり日清食品は広告宣伝費を多く投下しており、一方東洋水産は少ない広告宣伝費で効率的に売り上げを上げていることがよくわかります。
研究開発費
つづいてメーカーにとって競争力の維持・向上するために必要な研究開発費についてもみていきましょう。
売上高のうち研究開発費が占める割合でランキングしています。
研究開発費に関しては日清食品の方が積極的に投下していることがわかります。
日用品業界の比較では、花王とユニ・チャームが3.9%で同率1位でしたので、そちらと比較すると、即席めん業界は売上高に占める研究開発費の割合はやや少なめという結果になりました。
海外売上高比率
つづいて海外売上高比率のランキングです。
メーカーは国内人口減少→国内需要減少という課題を抱えており、各社海外展開を強化しています。
※各社下記の数値を用いて算出しています。
・日清食品:米州、中国、アジア、EMEAの売上を分子に算出
・東洋水産:海外即席めん事業の売上を分子に算出
海外売上高比率は主に米州、中国を展開エリアとする日清食品が上回る結果となりました。
東洋水産は米国、メキシコ、中南米を主な展開エリアとしています。
時価総額
つづいて執筆日当日の時価総額のランキングです。
時価総額とはその企業の企業価値を表す指標で、業績だけなく将来の成長に対する期待も大きいことを意味します。
営業利益の順位と変わらず日清食品、東洋水産の順になりました。
日清食品の時価総額が初めて1兆円を超えたことはニュースにもなっていましたよね。
平均年収
最後にみなさん気になる平均年収のランキングです。
平均年収では日清食品が東洋水産を上回るという結果でした。
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さいごに
いかがでしたか?
即席めんメーカーをさまざまな角度からランキングしてみました。
転職先、就職先を決める際、売上高のランキングだけではわからない部分もたくさんあるということがおわかりいただけたかと思います。
是非みなさんも色々な角度から企業を分析し、自分に合った会社を見つけてくださいね!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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